三井化学と日本IBMは2023年4月12日、生成AIの1つであるGPTと、IBMのAI/コグニティブ技術「IBM Watson」を組み合わせることで、三井化学製品の新規用途を探索する業務を高精度化/高速化する実用検証を開始したと発表した。
三井化学は、2022年6月に、「IBM Watson」による新規用途探索の全社展開をスタートした。これまでに20以上の事業部門が同AIを用いて100以上の新規用途を発見した。2023年度は、研究開発やコーポレート部門も含め、実用部門を拡大していく。
事業部門の1つのテーマにつき、500万件以上の特許、ニュース、SNSといった外部のビッグデータをIBM Watsonへデータ投入し、三井化学固有の辞書も構築している。長年の経験や専門知識を持った営業や、事業領域の現場のスペシャリストが、同AIを活用してビッグデータを分析することで、先入観や既知の知見にとらわれない新規用途を発見できるようになったとしている。
例えば、SNSデータ分析では、ある地方電鉄で「車中がカビ臭い」という投稿が多いことを見つけ出し、従来の営業手法では思いつかなかった電車内の防カビ製品の販売活動へとつなげている。
IBM Watsonの成果は出ているが、いまだ新規用途の発見にはある程度の時間がかかるという課題がある。この課題に対し、生成AIの1つであるGPTを活用することで、特許やニュース、SNSといったテキストデータから、三井化学が注目すべき新規用途を生成・創出する。こうして、注目すべきとする根拠や外部環境要因を明らかにして、新規用途探索の精度とスピードを向上させることで、新規用途の発見を増やす。
そこで、三井化学と日本IBMは今回、GPTの1つである「Azure OpenAI」などを活用した実用検証を開始した。新規用途探索という目的に合わせてGPTに対する指示を洗練させ、三井化学が注目すべき新規用途候補を特定・抽出する。
この結果をIBM Watsonに適用し、キーワードを絞り込んで分析することで、Watsonの実用に慣れていないユーザーでも短時間で新規用途を発見可能になる。また、SNS動画も含めたマルチモーダル化を行い、これまでIBM Watsonを活用して発見してきた新規用途の情報をGPTへフィードバックする。これにより、新規用途創出の自動化を目指す。
三井化学は今後、生成AIとIBM Watsonを活用し、SFA(営業支援)、マーケティング自動化(MA)、マテリアルズインフォマティクス(MI)、ロボティクスと連動し、事業とR&Dといった異なるステークホルダー間の情報を融合する。これにより、市場開発から製品開発までのスピードを加速したいとしている。